〜ある日の授業〜
おい、先生!
理科の課題でわかんねえところがあるんだけど教えてくれ!
数学の授業中にその質問をするのは些か肝が据わりすぎているような気がしますがそれはさておき、理科の課題ですか。
先生が答えられる範囲であればお答えしますよ。
月の満ち欠けのところがわかんねえ!!!!
特に、この問題は納得いかねえんだ……
『夕方、南の空に見える月はどんな月か』
答え丸写ししてるから、答えが上弦の月になるのは知ってるんだけど、それがどうしてそうなるのか全然納得いかない。
答えの丸写しの件については理科の担当教員に報告するとして、その範囲であれば先生でも少し説明ができそうです。
同じような
『明け方、南の空に見える月はどんな月か』
の答えが下弦の月になる……もっといえば、下弦の月だと特定できる理由についても一緒に理解してしまいましょう。
いくつか段階に分けて説明しますね。
目次
月は位置によって見える形が変わる
皆さんご存知の通り、月には『満月』『新月』『上弦の月』『下弦の月』『三日月』など、様々な形が存在しています。
そして、それらの形は月がどこにあるかによって決まります。
月が光って見えるのは、太陽の光が月に当たっているからですので、上の画像のように月が見えるのです。
この図はよく見ますよね。学校の授業でもほぼ間違いなく扱うかと思います。
月はおよそ1ヶ月で地球の周りを回っている
地球が1年間かけて太陽の周りを公転しているのは皆さん知っていますよね。
同じように、月はおよそ1ヶ月かけて地球の周りを回っています。
なので、たまに勘違いをする人がいるのですが上の画像において、月がぐるぐる回っているように見えますが、画像は『1ヶ月かけて月が地球の周りをまわる様子』であって、『1日に起きている現象』を表しているわけではないのです。
上弦の月の説明は、上のような図を使ってされることが多いと思いますが、ちゃんと図の意味を理解していないと頭が混乱してしまいます。
上弦の月が見えるのは『1日の出来事』ですが、上の画像は『1ヶ月の様子』を表していることを再確認しましょう。
月の出、月の入りというものがある
日の出と日の入りについては皆さんご存知でしょう。
普段生きてきて、太陽が昇ったり沈んだりするのは当たり前のように体験していますよね。
同じように、月にも『月の出』『月の入り』と言って、月が昇る時間と、沈む時間があります。
例えば、これは東京のある1週間の月の出と月の入りの表になっています。
(自分の地域でもやってみよう!→高精度計算サイト)
このように、月にも昇る時間と沈む時間があるんですね。
太陽と月は対比されることがよくありますよね。
そのせいで、漠然と太陽が沈んだら月が昇るというイメージを持っている人も多いのではないでしょうか?
しかし、実は上の表からも分かるとおり、太陽が沈んでも全然月が昇ってこない日もありますし、逆に太陽がまだ沈んでないのに月が昇ってしまう日だってあるのです。
おそらく、この勘違いが解消できれば、すぐに上弦の月が理解できるようになりますよ。
上弦の月が見れる日はお昼頃から月が見えている!?
それでは問題となっていた、上弦の月が見れる日について考えていきましょう。
上弦の月が見れる日は、次の画像のようになっています。
本当なら地球の地軸が傾いていて、こんなにきっちりと時間で昼夜を分けることはできませんが、今回は簡単のために6時から18時は太陽が出ているということにしています。
この図を見て貰うと、例えば6時の時は月が反対側にあるので、月を見ることができないのが分かるかと思います。
徐々に時間が進んで、12時になったところで、ようやく月が見れる位置に私たちが移動し、そこでは東に太陽が見えてきます。
これは太陽や月が『東→南→西』と進んでいくという知識と矛盾しませんよね。
そして、18時。
つまり夕方になった時、月は私たちの真上(南)に見えるのが分かるかと思います。
なので、
夕方、南の空に見える月は上弦の月
ということなのです。
おまけ1:何故、右半分が光っているのに上弦の月と呼ぶの?
そもそも問題、右半分光っている状態の半月のことを何故上弦の月と呼ぶのでしょうか?
それは、『月が沈むときの形』に由来しています。
突然ですが、皆さん右手を出して手をバイバイするように振ってみてください。
実は、月はバイバイするように傾きを変えながら東→南→西の順で動いています。
そして、南の空で右半分が光っているとき、月が沈むときの形を考えてみましょう。
すると、沈むとき上に弦が張られた弓のような形をしているのが分かるかと思います。
この様に、南の空で右半分が光っているなら、西の空に沈むときに弦が上を向いた弓に見えるため、上弦の月と呼ばれています。
画像は出しませんが、同様に南の空で左半分が光っているときのことを考えてみると、今度は逆に沈む時に弦が下を向いているように見えますから、こちらは下弦の月と呼ばれます。
おまけ2:どうして太陽や月は『東→南→西』の順で昇っていくの?
全く疑問に思わない人もいるかもしれませんが、これに納得がいかなくて天体分野そのものに嫌気がさしてしまう人も中にはいます。
確かに、『東→南→西』で太陽が昇るのは授業で観察したので納得がいきます。
地軸がズレているため、南の方に見えるのも納得がいきます。
でも、本当に『東→南→西』だけなの?『東→北→西』にはならないの?という疑問がありますよね。
実をいうと、『東→北→西』となる地域は存在しています。
例えば、南半球に位置するオーストラリア(羊が有名)では、太陽が『東→北→西』と昇っていくそうです。
つまり、学校の授業で太陽は『東→南→西』と昇るのが当たり前として問題が出されますが、それは特別な注意書きがない限り日本での事柄について出題されているということなのです。
少し考えすぎてしまう人や、頭の回転が速い人だと、例外のようなものを見つけてしまうことも多いかと思いますが、この分野では日本を前提にしてるんだよな〜と納得しましょう。
おわりに
よーし!完全に理解した!
もう天体マスターだぜ!
おいおい先生、気でも狂ったか?
突然騒ぎ始めて
いえ、たろうさんのセリフを先取りしようと思ったのです。
どうでしたか?ちゃんと疑問は解決できたでしょうか?
まあまあ理解できたぜ。ありがとな!
理科の先生を交換して欲しいくらいだぜ!
教員間での確執を生みますので絶対に理科の先生には言わないでくださいね。
修羅場るのは同じ教科担当の間だけで間に合っていますので。
それではまとめに入りましょう。
《本日のまとめ》
・月の見える形は、月の位置によって決まる。
・月はおよそ1ヶ月かけて地球の周りを回る。
・例の画像は1日で月がぐるぐる回っているわけではないので注意!
・『月の出』『月の入り』というものがある。
・上弦の月が見える日は、実は昼頃からすでに月は出ている。だから、夕方ごろ南に月が見える。